工場や建設現場に欠かせないクレーン設備。
重量物を安全かつ効率的に扱える反面、一度トラブルが起きると生産停止や重大事故に直結する設備でもあります。
クレーンの故障は、いきなり発生するように見えて、実際には小さな前兆が出ていることがほとんどです。しかし、設置環境や構造によっては、その前兆に気づきにくいケースもあります。
本記事では、代表的なクレーンの種類ごとに、構造と用途・よくある故障事例・故障の前兆・その場で取るべき応急・初期対応について、現場目線で解説します。
● 天井クレーン
構造・特徴
天井クレーンはその名の通り、工場の天井に走行レールを設置し、その上を横行・走行するクレーンです。建屋全体を作業範囲としてカバーでき、重量物の搬送に非常に優れています。
一方で、設置には十分なスペースと建屋強度が必要であり、設備としては比較的大型になります。
【故障の前兆が見えにくい理由】
天井クレーンは揚程が高いものが多く、
・異音
・振動
・ブレーキの効き不良
といった初期症状が作業者の耳や目に届きにくいという特徴があります。
そのため、気づいたときには症状が進行しており、深刻な故障につながるケースも少なくありません。
【故障事例】
代表的なのが、
「上下・横行・走行のうち、一つの動作だけが動かない」という症状です。
この場合、まず考えるべきは
機械的な故障か
電気的な故障か
という切り分けです。
【その場の対策(機械的な故障)】
ブレーキが効きっぱなし
減速機の破損
安全装置の作動
これらは分解整備が必要な領域です。
専門作業ができない状態で無理に動かそうとすると、
修理不能なレベルまで故障が悪化
荷の落下などの重大事故
につながる恐れがあります。
☆電源を落とし、使用を停止することが最優先です。
【その場の対策(電気的な故障)】
ケーブル断線
電圧降下
リレー接点劣化による接触不良
電圧降下の場合は、集電部分の汚れが原因のことも多く、虫が挟まっているだけというケースもあります。
ただし、エラーの原因が特定できない状態で無理に復帰させると、
暴走や誤動作の危険性があります。
専門作業ができない場合は、やはり電源を切って使用停止が安全です。
● テルハ(単軌クレーン)
構造・特徴
テルハは、工場内の横向き柱などを利用し、Iビームなどの単軌レールにホイストやチェンブロックをぶら下げたクレーンです。
作業範囲は柱の区間内に限定されますが、数百kg~2トン程度、高頻度・短距離移動といった用途に非常に向いています。
コスト面の特徴
導入コストが比較的安く、故障時には「修理」よりも本体載せ替えの方が安く済むケースもあります。そのため、消耗品的な扱いで使われることも珍しくありません。
【故障事例と前兆】
使用頻度が高いため、
フック外れ止め
フック牽引部の肉減り
といった吊り具周りの摩耗が多く発生します。
また、
ブレーキライニング
リレー接点
などの消耗品も極端に減りやすく、異音・すべり・動作不良といった初期症状が出やすいのが特徴です。
揚程が低いものが多いため、故障の前兆は比較的分かりやすいクレーンとも言えます。
【その場の対策】
☆消耗品を定期的に交換することが最大の対策です。
フック部品は特に事故に直結するため、「まだ使えそう」ではなく、早めの交換を心がける必要があります。
● ジブクレーン
構造・特徴
ジブクレーンは、工場内の縦柱を利用して旋回可能なアーム(ジブ)を取り付け、その下にホイストやチェンブロックを設置するクレーンです。
旋回動作がある分、天井クレーンほど大掛かりではない
しかし作業範囲は比較的広い というバランスの良い設備です。
【故障事例と前兆】
旋回動作による
ケーブル類のねじれ
繰り返し曲げ
が発生しやすく、断線トラブルが多くなります。
また使用頻度が高くなりがちで、消耗品の劣化も早めです。
揚程が低いため、異音や挙動の変化には気づきやすい傾向があります。
【その場の対策】
コモン線や導通線が断線すると、
接触不良によるアークが発生し、
他の線とつながって暴走する危険性があります。
☆この場合は即座に電源を落として使用停止。
ケーブル長に余裕があれば、断線している区間を余裕をもって切り落とし、再処理することで応急対応が可能な場合もあります。
● 門型クレーン・橋形クレーン(ガントリークレーン)
構造・特徴
屋外作業用として、地面に走行レールを敷設し、
門型のフレームにホイストやチェンブロックを取り付けたクレーンです。
屋根のない場所でも使用でき、
走行レール内を広い作業範囲としてカバーできます。

【注意点】
コンパクトタイプは非常に安価なものもありますが、転倒リスクが高く、重大事故につながりやすいため、導入時には慎重な検討が必要です。
【故障事例】
屋外設置のため、
サビ
腐食
漏電
によるトラブルが多くなります。
腐食が進行すると、定格荷重付近で吊り上げた際に本体が傾くといった非常に危険な状態になることもあります。
【その場の対策】
・傾きがある
・腐食が進んでいる
上記の場合は、転倒の恐れがあるため即使用停止し、専門業者による点検を依頼してください。
漏電が確認された場合は、状況に応じて
シール処理
防水ボックスへの変更
など、水の侵入を防ぐ対策が必要です。
【まとめ】
クレーンの故障対応で最も重要なのは、「無理に動かさない判断」です。
特に、
原因が特定できない
専門作業ができない
場合は、電源を落として使用を停止することが、結果的に設備と人命を守る最善策になります。
【次回予告】
検査と点検の違い
クレーン性能検査とは何か
について解説していきます。
現場で「なんとなくやっている点検」を、意味のある安全管理に変える内容をお届けする予定です。
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