【クレーンの点検と性能検査の重要性】― 日常点検から性能検査までの流れを分かりやすく解説 ―

なぜ点検・検査が必要なのか


クレーンは重量物を安全かつ効率的に取り扱うために欠かせない機械設備である一方、ひとたび事故が発生すれば重大災害につながる危険性を常に抱えている。

そのため、クレーンの安全性を確保するためには、法令に基づいた点検・検査を確実に実施するとともに、日々の運転の中で異常を早期に発見することが極めて重要になります。


本記事では、作業開始前・作業終了時の点検や日常点検の考え方から、組立設置の届出、落成検査、性能検査に至るまで、クレーン点検の全体像について解説します。


日常的な点検の役割と重要性

作業開始前および作業開始後点検・日常点検の役割


クレーン各部の運転状況の変化や異常発生の兆候は、クレーンを毎日操作している運転士が最も早期に発見できる立場にあります。いかに定期検査や性能検査を実施していても、日常的な使用の中で生じる小さな異変を見逃してしまえば、大きな事故につながりかねません。

そのため、クレーンの点検には大きく分けて以下のような日常的な点検があります。


作業開始前点検・作業終了時点検


作業開始前点検

→その日の作業を安全に行える状態かを確認するための点検。

ワイヤロープの状態、フックの変形、ブレーキの効き、制御装置の作動状況、異音や異臭の有無などを目視および簡易操作によって確認します。


作業終了時点検

→運転中に異常が発生していないか、使用後に新たな損傷が生じていないかを確認する。

異常があれば速やかに記録・報告することが重要になります。


日常点検(運転中点検)

日常点検

→実際の運転中における作動状態の変化から異常を発見する点検である。


例えば、

「全く動かない」「動きが鈍い」「ブレーキの効きが低下している」「操作時に異音が発生する」

といった現象が確認された場合には、そのまま使用を続けるのではなく、直ちに作業を中止し、関係者へ連絡する必要があります。


これらの兆候は重大な故障や事故の前触れである場合が多く、早期対応が事故防止の鍵となります。



クレーン点検・検査の全体的な流れ


クレーンの点検や検査は、日常点検だけでなく、設置段階から使用期間中まで、法令に基づいて体系的に実施されます。


組立設置法令第88条第一項の届出

クレーンを新たに設置する場合、労働安全衛生法およびクレーン等安全規則に基づき、組立設置に関する届出を所轄の労働基準監督署へ提出する必要がある。

→設置計画が法令に適合しているかを事前に確認するための重要な手続きになります。


落成検査を受ける場合の措置

クレーンの組立・設置が完了した後、一定の条件に該当するクレーンについては、落成検査を受けなければ使用することができない。

→落成検査では、構造や安全装置が設計どおりに設置され、正常に機能しているかが確認されます。


仮荷重試験の実施

落成検査の一環として、仮荷重試験が実施される。

→定格荷重以上の荷重を吊り上げ、クレーンの強度や安定性、ブレーキ性能などを確認する試験。仮荷重試験は、クレーンが実使用に耐えうることを確認するための極めて重要な工程になります。


検査証の交付とクレーン設置報告書

落成検査に合格すると、検査証が交付されます。

検査証はクレーンを合法的に使用するために必要な証明書であり、常に所定の位置に備え付けておく必要があります。併せて、クレーン設置報告書の提出も求められます。


使用開始後の定期点検・検査

クレーンは使用開始後も、継続的な点検・検査が義務付けられています。


つり上げ荷重0.5トン以上のホイスト式クレーンなどについては、労働基準監督署や登録検査機関が実施する法定検査が義務付けられています。


月例検査

月例検査は、毎月クレーンの状態を確認する点検であり、ワイヤロープの摩耗、ブレーキ装置、制御機器、安全装置などを中心に点検を行う。

日常点検では見落としがちな部分(分解作業)を含め、より詳細に確認することが目的です。


年次検査

年次検査では、月例検査よりもさらに詳細な点検が実施される。主要構造部材の損傷や変形、駆動装置の摩耗状況などを総合的に確認し、必要に応じて整備や部品交換を行う。

定格荷重検査を行い、たわみ量・動力ごとの電圧測定・漏電がないか等を検査します。


性能検査(定格荷重:3t以上)

性能検査は、クレーンの安全性能が法令基準を満たしているかを有効期間(原則二年)に一度確認する検査である。

荷重試験や各種安全装置の作動確認などを通じて、設置当初と同等の性能が維持されているかが確認されます。

検査終了後、検査証が更新されます。


特殊組立設置による、テルハやジブクレーンにおいても同様に点検・検査を行わないといけません。





おわりに

クレーンの安全は、一度の検査で確保されるものではありません。

作業開始前・作業終了時の点検、運転中の日常点検、そして月例・年次・性能検査といった積み重ねによって初めて維持されるものになります。


特に、日々クレーンを操作する運転士の「いつもと違う」という気づきは、事故を未然に防ぐ最も重要な要素の一つになります。

法令遵守と現場感覚の両立こそが、クレーン災害ゼロへの近道と言えるだろう。


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