交流ブレーキ特有の構造と異音発生のメカニズムについて~対策も説明します~

先日、巻上機に使用されている交流ブレーキの異音の修理を行いました。

クレーン設備では比較的よくあるトラブルですが、実際の現場では原因が複数重なっていることも多く、丁寧な確認と調整が必要になります。今回は交流ブレーキ特有の構造と異音発生のメカニズム、そして対策について少し詳しくご紹介したいと思います。


交流ブレーキの基本的な動作

まず、交流ブレーキの基本的な動作についてです。


交流ブレーキは、可動コアーと固定コアーをマグネットの吸引力によって引き寄せて動作します。

この構造の特徴として、直流ブレーキに比べて動作ストロークがかなり大きいという点があります。

直流ブレーキの場合、調整幅はおおよそ0.3〜0.5mm程度と非常に小さい。

交流ブレーキでは稼働部分の調整幅が15〜25mmほどあり、構造的に可動域が大きくなります。


なぜ交流ブレーキは異音が発生しやすいのか?


この「可動域の大きさ」が、実は異音発生の原因になりやすいポイントでもあります。


可動範囲が広いと、長期間の使用によってライニング粉や鉄粉などの細かなゴミが内部に入り込みやすくなります。

また、可動コアーと固定コアーが完全に密着していない状態で動作すると、振動音が発生することがあります。

この振動がクレーン本体の構造と共鳴すると、想像以上に大きな騒音となって現場に響き渡ることがあります。

実際、今回の現場でもブレーキ単体の問題だけでなく、クレーン構造体との共振によってかなり大きな音が発生していました。



対策

こうした場合の対策として、まず重要になるのが稼働部のガタつきの確認です。軸部分や支持部分に摩耗があると、わずかな振動でも大きな騒音につながります。

そのため、軸のガタツキが最小になるようにオイルレスブッシュを挿入し、動作の安定性を確保する処置を行うことがあります。

また、コアー周辺に動作に影響しない安全スペースが確保できる場合には、吸振材などを使用して振動を吸収する処置を行うこともあります。


ただし、振動が大きいケースでは、単なる調整では解決しないことも少なくありません。


特に多いのが、ブレーキケースや本体の軸部分の摩耗です。

この部分が摩耗している場合、ブレーキ単体の調整では限界があり、ユニットごとの交換を検討する必要があります。ブレーキユニットは巻上機の安全装置の中でも非常に重要な部品であり、その寿命はそのまま巻上機本体、さらにはホイストクレーン全体の安全性に直結します。つまり、ブレーキの状態は設備全体の寿命を左右する重要な要素と言えるのです。


とはいえ、現場では常に「コスト」という問題もあります。

ユーザー様の中には、できる限り修理で対応したいというご要望も多くあります。

そのため、単純に交換を勧めるのではなく、現在の状態でどこまで安全に使用できるのか、

また交換した場合のメリットや将来的なリスクについても丁寧に説明し、ご理解いただくことが大切になります。


寿命の話で言えば、ホイストクレーンは「どこまで傷んだら使用不可になるのか」という質問をよくいただきます。

安全規則や法令による基準ももちろんありますが、実際の現場では「故障率」に直結する状態かどうかが重要な判断基準になることが多いです。


例えば、ワイヤロープを巻き取るドラム部分です。

長年使用していると、ロープが収まる溝の部分が摩耗して削れていきます。

さらに経年劣化が進むと、溝が深くなり、その両側にあるツバ部分が削れて鋭く尖った形状になることがあります。

この状態のまま使用を続けると、ツバ部分がワイヤロープに接触し、ロープの素線を傷つけてしまう可能性があります。

ワイヤロープの素線切れは重大な事故につながる恐れがあるため、このような状態になった場合はドラム部分の交換が必要になります。


しかし、ドラムの交換は簡単な作業ではありません。

巻上機をほぼ全分解する必要があるため、作業工数も大きく、結果として修理コストが高額になる場合があります。その結果、「修理するより新しい巻上機本体を導入した方が安い」というケースも実際にあります。



まとめ

このように、クレーン設備では「修理を続けるのか」「更新するのか」という判断が非常に重要になります。

安全を最優先に考えることは当然ですが、クレーン設備に過剰な予算を投入してしまい、会社全体の経営に影響が出てしまうようでは本末転倒です。

私たちは、設備の状態や使用状況を踏まえながら、できるだけお客様のご要望に沿った形で最適な提案を行うよう心掛けています。


また最近では、海外製のクレーン関連機器を日本で使用したいというご相談も増えています。可逆式コンダクタやダクト給電装置など、海外メーカーの製品を取り寄せて日本国内で設置するケースもありますが、日本で使用するためには法規や規格への適合確認が必要になります。フォーマットの確認や技術資料のすり合わせなど、設置に向けた準備作業も重要な工程です。


We support legal compliance and documentation for installing overseas crane components in Japan.


海外製品であっても、必要な手続きや確認を行えば日本国内で安全に使用することは可能です。設備の選択肢が広がる一方で、導入には専門的な知識も必要になるため、こうした部分でもお役に立てればと考えています。


クレーン設備は、普段は目立たない存在ですが、工場や物流現場では欠かすことのできない重要な設備です。だからこそ、日常の点検や適切なメンテナンスが安全と設備寿命を大きく左右します。これからも現場で得た経験をもとに、設備の安全運用に役立つ情報を発信していきたいと思います。


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